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第3 裁判所の損害賠償算定基準について - 交通事故損害賠償の基礎知識 -
積極損害
- 治療費関係
- 治療費および入院費は、必要かつ相当な実費が認められる
- 症状固定後の治療費は、原則として認められない
- 入院雑費
- 1日あたり1500円
- 交通費
- 実費相当額。但し、タクシー利用については、傷害の程度、内容、交通の便等からみて相当性が認められないときは、電車、バス等の公共交通機関の運賃とする。
- 付添看護費
- 医師の指示があった場合又は症状の内容・程度、被害者の年齢等から付添看護の必要性が認められる場合は、認められる。
- 職業付添人を付した場合は、必要かつ相当な実費
- 近親者付添看護の場合は、1日あたり入金付添の場合は6000円、通院付添の場合は3000円
- 将来の介護費
- 原則として平均余命までの間、職業附添人の場合は、必要かつ相当な実費を、近親者付添の場合は、常時介護を要するときは1日につき8000円を、随時介護を要するときは介護の必要性の程度・内容に応じて相当な額。
- 装具・器具購入費等
- 車椅子、義足、電動ベッド等の装具・器具の購入費は、症状の内容・程度に応じて、必要かつ相当な範囲の額
- 家屋改造費等
- 家屋改造費、自動車改造費、調度品購入費、転居費用、家賃差額等については、症状の内容、程度に応じて、必要かつ相当な範囲の額
- 葬儀関係費
- 150万円
- 葬儀関係費は、原則として墓碑建立費、仏壇費、仏具購入費、遺体処理費等の諸経費を含むものとして考え、特段の事情がない限り、上記基準額に加えて、これらの費用を損害として認めない。
消極損害
- 休業損害
- 現実に休業により喪失した額が分かる場合は、その金額
- 現実に休業により喪失した額が判明しない場合は、基礎収入に休業期間を乗じて算定する。
- 後遺症による逸失利益
- 死亡による逸失利益
- 基礎収入の算定方法
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給与所得者
事故直前3ヶ月前の平均収入を用い、不確定要素の強い職種についてはより長期間の平均収入を用いる。
但し、死亡、後遺障害事案における若年者(概ね30歳未満の者)については、実収入額が、賃金センサスの学歴計、全年齢平均賃金を下回る場合であっても、将来的に生涯を通じて学歴計、全年齢平均賃金を得られる蓋然性が認められる場合は、学歴計、全年齢平均賃金を基礎とする。
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事業所得者
原則として事故直前の申告所得額を基礎とする。
但し、申告所得額を上回る実収入額の証明があった場合は、実収入額を基礎とする。
所得中、実質的な資本の利子や近親者の労働によるものが含まれている場合は、被害者の寄与部分のみを基礎とする。
事業を継続する上で休業中も支出を余儀なくされる家賃、従業員給与等の固定費も損害と認められる。
死亡、後遺障害事案における若年者(概ね30歳未満の者)については、実収入額が、賃金センサスの学歴計、全年齢平均賃金を下回る場合であっても、将来的に生涯を通じて学歴計、全年齢平均賃金を得られる蓋然性が認められる場合は、学歴計、全年齢平均賃金を基礎とする。
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会社役員
労務提供の対価部分は算定の基礎と認められるが、利益配当の部分は認められない。
死亡、後遺障害事案における若年者(概ね30歳未満の者)については、実収入額が、賃金センサスの学歴計、全年齢平均賃金を下回る場合であっても、将来的に生涯を通じて学歴計、全年齢平均賃金を得られる蓋然性が認められる場合は、学歴計、全年齢平均賃金を基礎とする。
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家事従事者(主婦)
賃金センサスのうち、学歴計・女性全年齢平均を基礎とする。
有職者であり家事従事者である場合は、実収入額が、学歴計・女性是年齢平均賃金を上回っているときは実収入額によるが、下回っているときは、学歴計・女性全年齢平均を基礎とする。
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無職者
原則としてゼロであるが、治療が長期に渡り、治療期間中に就職する蓋然性が高いときは休業損害が認められることがある。
死亡、後遺障害事案においては、被害者の年齢や職歴、勤務能力、勤務意欲等に鑑み、就職の蓋然性がある場合には認められ、その場合、被害者の年齢や失業前の実収入額等を考慮し、蓋然性が認められる収入額を基礎とする。
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幼児、生徒、学生
死亡、後遺障害事案において、原則として、賃金センサスの学歴計・全年齢平均賃金を基礎とする。
大学生又は大学への進学の蓋然性が認められる者については、賃金センサスの大学卒・全年齢平均賃金を基礎とする。
年少女子については、原則として、賃金センサスの男女を合わせた全労働者の学歴計・全年齢平均賃金を用いることとする。
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給与所得者
- 労働能力喪失割合
- 労働省労働基準局長通牒(昭和32年7月2日基発第551号)を参考にして、障害の部位、程度、被害者の性別、年齢、職業、事故前後の就労状況、減収の程度等を総合的に判断して定める。
労働省労働基準局長通牒(昭和32年7月2日基発第551号) 障害等級 労働能力喪失率 第1級 100/100 第2級 100/100 第3級 100/100 第4級 92/100 第5級 79/100 第6級 67/100 第7級 56/100 第8級 45/100 第9級 35/100 第10級 27/100 第11級 20/100 第12級 14/100 第13級 9/100 第14級 5/100 - 労働能力喪失期間
- 労働能力喪失期間の始期は、
- 原則として症状固定日
- 未就労者は、原則として18歳とし、大学卒業を前提とする場合は、大学卒業時
- 労働能力喪失期間の終期は、
- 原則として67歳まで
- 年長者については67歳までの年数と平均余命の2分の1のいずれか長い方を原則としつつ、被害者の性別、年齢、職業、健康状態等を総合的に判断して定める。
但し、むちうち症の場合は、後遺障害等級に応じ、12級程度は5年から10年、14級程度は2年から5年とする。
- 労働能力喪失期間の始期は、
- ライプニッツ係数
- 後遺障害事案や死亡事案では、将来の損害を現在受領するので、中間利息控除をする必要があり、その割合は民事法定利率の5%とし、計算式はライプニッツ方式による。
- 就労可能年数とライプニッツ係数
» 就労可能年数とライプニッツ係数 表
- 賃金センサス
- 平均余命
- 厚生労働省大臣官房統計情報部編「平成19年簡易生命表」より
» 平成19年 簡易生命 表
- 厚生労働省大臣官房統計情報部編「平成19年簡易生命表」より
慰謝料
- 死亡慰謝料
- 一家の支柱 2800万円
- その他 2000万円〜2500万円
- 死亡慰謝料の基準額は、本人分及び近親者分を含んだものである。
- 加害者に飲酒運転、無免許運転、著しい速度違反、ひき逃げ等が認められる場合や、被扶養者が多数の場合は、増額事由となる。
- 後遺障害慰謝料
- 後遺障害の等級に応じて算定する。
- 14級に至らない後遺障害がある場合は、それに応じた後遺障害慰謝料を認めることがある。
- 加害者に飲酒運転、無免許運転、著しい速度違反、ひき逃げ等が認められる場合や、被扶養者が多数の場合は、増額事由となる。
- 原則として介護にあたる近親者の慰謝料を含むが、重度後遺障害についえては、近親者に別途慰謝料を認めることがある。
- 入院、通院慰謝料
- 入院、通院期間を基礎として算定する。
- 本来より入金期間が短くなった場合は増額が考慮され、必要性が乏しいのに本人の意向で長くなった場合は減額が考慮される。
- 通院が長期に渡り、かつ、不規則な場合は、通院期間と実通院日数を3.5倍した日数とを比較して、少ない方の日数を基礎として通院期間を計算する。
- 軽度の神経症状(むちうち症で他覚所見のない場合等)の入通院慰謝料は通常の慰謝料の3分の2程度とする。
- 加害者に飲酒運転、無免許運転、著しい速度違反、ひき逃げ等が認められる場合や、被扶養者が多数の場合は、増額事由となる。
- 重傷の入通院とは、重度の意識障害が相当期間継続した場合、骨折又は臓器損傷の程度が重大であるか多発した場合等、社会通念上、負傷の程度が著しい場合をいう。
物的損害
- 車両修理費等
- 修理不能または修理費が事故時の時価相当額を上回る場合は、原則として全損と評価し、事故時の時価額とする。
- 時価額の認定にあたっては、オートガイド自動車価格月報(いわゆるレッドブック)等を参考にする。
- 修理可能であって修理費が事故前の時価相当額を下回る場合は、必要かつ相当な範囲の修理費とする。
- 評価損
- 修理してもなお機能に欠陥が生じ、または事故歴により商品価値の下落が認められる場合は、その減少分を損害とする。
- 代車使用料
- 代車使用の必要性があり、実際に代車を利用した場合に、相当な修理期間につき相当額の単価を基準として定める。
その他
- 弁護士費用
- 裁判で判決になった場合には、認容額の10%を基本として認められる。
- 遅延損害金
- 裁判で判決になった場合には、事故時から起算して年5%の割合を基本として認められる。